ディスカッションの風景

総論

今、地球が泣いている。

人間の経済活動による資源利用・乱用が原因で温室効果ガスが大量に発生し、温暖化が起こっている。今のまま 経済成長が続けば、資源の枯渇とともに低品質な資源を使うようになり、さらに温暖化が促進され、砂漠化、海 面上昇などの顕在化している問題にとどまらず多くの副次的問題が発生するだろう。一方で、資源を利用した人 間の開発、経済発展への波は、不可逆的に流れている。一旦工業化してしまった我々の生活をかつての水準に戻 すことは困難だ。2002年時点で、世界人口の22%を占めるOECD諸国とロシアだけで年間に一次エネルギーの70%を 消費しているが、21世紀半ばには人口増加と経済成長を背景として、途上国を中心に現在の総消費量の二倍以上 になると推定されている。今、我々は資源を有効利用しつつ経済を発展させる「持続可能な発展」を単なる理想 論に終わらせることなく達成しなければならないのではないだろうか。そしてそのためには温暖化の問題とその 原因を把握し、解決の手だてをうち、手だてを常に最良なものへと改善していかなければならない。

はじめに、環境問題を考える上でその基盤をなす環境倫理という考え方に着目したい。

我々人間は、経済活動の代償に自らが引き起こした環境問題を解決する責務を負っている。人間の目的・行動は 無意識のうちに価値観や倫理によって規定されるといえるが、環境においても1970年代より環境倫理という考え 方が唱えられ、環境対策の根本を規定している。しかし、急速な経済発展を望む一方で「環境保護」という大義 名分が先行し、環境問題が次々に露呈している今、環境倫理自身を見つめ直さなければならないのではないだろ うか。さらに、世代間での倫理の是非や様々なアクターの経済活動を過去・現在・未来の枠組みで論じあい、途 上国における環境倫理の定着をも考えていく必要がある。

その上で、実際に世界各地で起こっている環境破壊の現実を掘り下げていきたい。温暖化を引き起こす様々な問 題のうち、特に森林伐採は二酸化炭素吸収率を下げ、地球温暖化を促進させている。その背景には途上国におけ る人間活動と環境保全の狭間にあるジレンマが存在し、目の前の資源に日々の生計を頼らざるをえない人々は、 環境破壊を省みない伐採を行ってしまっている。そのために、途上国人口が増加し続けている今、森林伐採に対 する懸念はさらに強まっている。果たして、森林伐採を食い止めることはできないのであろうか?森林伐採問題 を問い直すことによって温暖化を引き起こす人間活動の背景と環境破壊の現実を見直さなければならない。

次に、地球温暖化の防止に重要な一翼を担う社会制度や技術革新についてとらえ直してみたい。不可逆的な経済 発展の中で考案されるさまざまな対応策も、多くの問題を孕んでいる。環境税、炭素税やクリーン開発メカニズ ムなど、技術革新の実社会導入を促進する社会制度が考案されたものの、果たして有効に機能しているのであろ うか。例えばバイオエタノールのように、人々の食糧分配のためにその正当性が疑問視される革新的技術もある のではないか。資源と技術の折り合いをつけ、資源を有効活用するための社会制度や先端技術・技術移転が、温 暖化防止に向けた今後の主要な論点であることは間違いない。

最後に、1997年の京都議定書締結という初めて世界規模で締結された温暖化防止条約の有用性と、ポスト京都に 向けた枠組み作りについて考えていきたい。京都議定書は、形式的ではあっても、各国が気候変動への取り組み を形にした点において大きな一歩であったといえよう。しかしながら、実質的には各国益を重視した外交的で不 平等な条約であると指摘され、温暖化への意義も疑問視されている。今後のサミットや締約国会議の状況とポス ト京都議定書の全貌が注目されるなか、京都議定書を振り返り、気候変動にとってさらに有用な枠組み作りに向 けて議論することで、今後の地球環境問題全体を考えていく必要がある。

以上のように、地球温暖化は様々なアクターを背景に倫理や恣意性、科学技術などあらゆる問題が複雑に絡み合っ た問題を内包している。我々環境分科会は現実から目をそらさず、投げ出さず、理想のみを語るのでもなく、地 球温暖化問題の現状と原因、対策と今後の課題について議論し、「持続可能な発展」について、可否をも含めて 検討していきたい。

第一討論会 環境倫理 第二討論会 森林伐採と地球温暖化 第三討論会 社会制度と技術革新 第四討論会 ポスト京都議定書


スタッフリスト



チーフ:本多菊草 慶應義塾大学法学部政治学科1年

松元淳 早稲田大学国際教養学部4年

川島碧 慶應義塾大学法学部政治学科2年

草野友基 慶應義塾大学経済学部